昨今、巷を賑わしている、高校生の未履修問題。
受験を目前に控えて、準備に余念がなかった受験生の皆さんには、本当に降って湧いた災難という感じでしょう。
もともと、90年代初めから文部科学省(当時は文部省だったかも知れません)が教育現場に導入した、「ゆとり」と「多様化」の二本柱。これにより、年間授業日数は大幅に減らされたうえ、「学校の個性を出さねば」などという風潮が広まったように思えます。
今朝の新聞では、政府のなかでも文部科学省に対し、何らかの救済措置を施すよう働きかけが始まっているようです。たしかに、生徒さんにとっては災難以上の何者でもないでしょうから、こういう声があがることも当然でしょう。現実問題、いまから履修に必要とされる授業時間分、補習・補講を行うことは難しいでしょうし。
ただ、この問題、これで終わらせてしまってはいけないと思います。
報道によれば、このような「履修逃れ」が起こったきっかけは、生徒さんが「受験の科目にないので、その時間がもったいない」と言い始めたことにあるようです。そこで学校側は、「ならば」と他の科目に授業時間を振りかえてしまった。これは、大学の合格率を高めたい高校側の思惑にも合致したんでしょう。
本来、高校側が生徒さんに教えねばならなかったのは、「高校での勉強は受験に合格することがすべてではないよ」ということではなかったのかな、と思います。
また、ここで割を食った科目が「世界史」だったということに、私としては大きな危惧を覚えます。
昨今の世界情勢を理解するうえで、世界史(ことに近現代史)の知識は不可欠でしょう。日本史だけを勉強したとして、当時の日本が置かれていた世界の情勢を理解していなければ、なかなかすんなりとは納得できないことも多いと思います。私は、世界史を学ぶことは、日本史を学ぶ上でも大きく役立つことだと断言できます。
受験生の皆さんに「これから再履修せよ」というのは、私も非現実的な話だと思いますが、現時点で高校1、2年生という人には(もちろん、小中学生でもいいのですよ)、是非とも世界史の面白さを知って欲しいと思います。
そういえば、以前、赤城毅さんからこんな話を聞いたことがあります。
赤城さんは、専業作家になる前、さまざまな大学で現代史を教えていたのですが、世界の歴史的事実について、あまりにも無知な学生さんが多い、と嘆いていました。たとえば、「ロシアに侵攻したヒトラーを、ナポレオンが撃退した」というような。「安達くん、こんな学生に単位を与えて、社会に出しても良いのかと悩むよ」と苦笑いをされていたのですが、そうか、彼らは高校生で学ぶべき内容を、教えられていなかったんですね。
ただ、何のかんの言っても、社会に出て無知を晒してしまった場合、恥ずかしいのは自分です。「高校じゃ習わなかったもん」という言い訳も通じません。
せめて、一般教養レベルでの世界史でいいので、今から知識を補うようにして頂きたいと思います。面白く読める本も、たくさん出ていますから。
それに、繰り返しになりますけど、実際に調べ始めてみると、世界史って本当に面白いんですから。
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