面白い本を読みましたので、ちょっと紹介。
知られざる日本の恐竜文化
著者の金子隆一氏は、以前、一緒にアメリカまで飛行機を見に行ったこともある友人……というのも失礼、師匠の一人なのですが、彼が書いた「恐竜ビジネス」に関する本です。
毎年のように行われる「恐竜博覧会」などのイベント。会場は子ども連れで満員御礼、恐竜グッズも飛ぶように売れる……となると、さぞや「恐竜」関係は美味しいビジネスになるかと思いきや、世の中はそう甘いものではないようでして。
前段を読んでいると、さぞや金子氏は「恐竜」ビジネスが儲かると勘違いしたヤカラに悩まされているんだろうなあ。と思ってしまいます(笑)。
そういう人たちに「まず、この本を読んでから具体的な話を考えてみてはどうでしょう」と言うための本でもありますね。
ただ、一冊を通じて書かれているのは、金子氏が日ごろから感じているであろう、日本における「恐竜」ブームが、いかにマスメディアによる「作られたブーム」であり、きわめて表層的なものに留まっているか、ということです。もちろん、金子氏も「山が高くなるためには、裾野が広くなければならない」ことは承知しているはず。
そのためには、マスメディアを通した「ブーム」も必要だということなのでしょうけど、問題は、そこから先の「登山口」が用意されていないことなんでしょう。
さらにいえば、残念ながら現在の日本では、誤った「登山口」「登山道」が多いのも問題です。これはマスメディアというよりは、古生物学界の問題かも知れません。
どちらにせよ、子どもの頃に「恐竜」が好きだった人、また、過去に子どもを連れて「恐竜展」に行ったことのある人には、大変おもしろく読める本だと思います。
さらに言うと、この本で書かれた「恐竜ビジネス」を取り巻く環境についての記述を読んで思うのは、おそらく、ほかの趣味的分野でも同様のことは珍しくないんだろうな、ということ。
先日も、クラシック音楽を長く愛好している人と話をする機会があったのですが、昨今のクラシック・ブームに乗って、さまざまな業者さんが参入して、裾野が広がったのは良いことなのだけど、なかには不勉強きわまりない業者もいて……ということでした。ブームというものは、本質的に軽佻浮薄な側面を持つものなのですが、ある限られた人たちだけで楽しんでいた趣味的分野を大きく広める過程では、有用なことも事実です。逆に、いかにそのブームを「うまく利用するか」ということが大事なのでしょう。
そういう側面からも、非常に興味深く読むことができた一冊でした。
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