自転車の3人乗りを認めるかどうかで、またぞろ警察庁が変なことを言い始めました。
当初は、現状は黙認されている自転車の3人乗りを、道路交通法の規定に従って、今後は認めない方針と発表したのですが、子育て世代、とくに女性層から猛反発を受け、「今後、安全に3人乗りが出来る自転車が開発されれば、それについては3人乗りを認める」というように方針を転換した様子。
これを読んで、「またかよ」と思った人は少なくないと思います。
そもそも、今回、警察庁が「厳格に規定を適用する」と言っている道路交通法では、自転車は軽車両に分類されています(第二条第一一項)。そして、軽車両である自転車は、車道を通行することが定められています(第一七条第一項)。
ただ、急激なモータリゼーションの結果、自動車と自転車の事故が急増し、これではダメだということで、1978年、「暫定的処置」として、標識で指定された場合に限り、歩道を走行しても良いことになりました。よく歩道に「自転車通行可」と書かれた標識があると思いますが、これのことです。
この時も、「自転車は歩道の中央から車道寄りの部分を徐行せねばならず、自転車が歩行者の通行を妨げるときには、一時停止しなければならない」となっていました。
この暫定処置は、「急に車が増えたので、このままだと自転車の事故が増え続けてしまう。自転車道を整備するまで、いったん歩道に上がっていて」ということでした。
いままで車道を走っていた自転車が、こんどは歩道を走ることになります。当然、歩道には歩行者がいるわけですし、今までのように速度を出すわけにはいきません。条文にあるとおり、歩行者の通行を妨げる恐れがあるときは、一時停止しなければなりません。
そうなると、いままでの自転車では使い勝手が悪くなります。歩道を走るのですから、スピードはさほど出なくても構いません。それよりも、重心が低くて小回りが効き、サドルの位置を低くして足つきを良くした自転車が求められます。
……これが、いわゆる「ママチャリ」なわけです。
自動車の急増を見抜けなかった道路行政の無策により、車道における自動車と自転車の共存が難しくなり、歩道に上げたのは良いけれど、そのままの自転車では使い勝手が悪くなって、新しい自転車が生まれる。
後半の部分は、自転車メーカーの企業努力によるところもあるので、一概に否定することも出来ないのですが、やはり、もともとの立脚点がおかしい気がします。
今回の「自転車の3人乗りを認めるか否か」という議論も、本来はもっと根本的な解決策を考える必要があるのだと思います。私も含め、小さい子どもを育てている身としては、個人での努力で補えない部分については、行政の助けを期待しています。少子高齢化が困る、というのであれば、もっと子育てがしやすい環境を整えることに本腰を入れて欲しいのです。その結果、「子どもを2人、自転車の前後に乗せて走る必要がなくなる」というのが本来の姿ではないか、と思います。
いろいろと弄くった挙げ句、出てきた答えが「安全に3人乗りが出来る自転車の開発」というのは、なんとも人を食った話だと思います。
3人乗りを規制することに対し、反対意見を述べていた人たちが、この案で納得するとでも思っているのでしょうか。
もう小手先の変更で、その場しのぎをするのはやめましょうよ。
ただ、ひとつだけ自転車側にも言わなければならないのは、やはり最近、自転車に乗る人のマナーが悪すぎるのは確かです。
さきの条文を引くまでもなく、歩道はあくまでも歩行者のもの。自転車は「間借り」させていただいているに過ぎません。ベルを鳴らして道を開けさせたり、スピードを出して歩行者のあいだをすり抜けたりする行為は、厳に慎むべきでしょう。
それに、子どもには絶対ですが、親もヘルメットをかぶるべきだと思います。頭さえ守っておけば良かったのに……、という事故例はいくらでもありますから。
本来の自転車の可能性を考えると、いまの自転車が置かれている状況は、あまりにもったいない気がします。
道路特定財源でも何でもいいですから、自転車道をもっと整備して、安心して自転車に乗れるようにして欲しいものです。
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