「非実在青少年」って、ご存じですか?
皆さんは、「非実在青少年」という言葉をご存じでしょうか。
実在ではなく、マンガやアニメ、ゲームなどの創作物に出てくる登場人物のことを指す言葉のようで、東京都のお役人の造語です。
定義は、「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されると認識されるもの」ということのようです。
で、東京都は、この「非実在青少年」への規制を考えているようなのです。
つまり、「マンガ・アニメ・ゲームその他、画像として描かれる青少年の姿にも児童ポルノ法を適用する」という話なのですね。さらには、児童ポルノ法の法論議のなかで、なんども俎上に上がりつつも、いまだに慎重な意見が多い「単純所持」、とくに売買する意志がなくても、もっているだけでダメという話を、この「非実在青少年」に関して、さきにやってしまおうという意図もあるようです。
さらにいえば、この非実在青少年を含む児童ポルノの根絶にむけて努力し、東京都に協力するのが「都民の義務」なんだそうです。
私は、実際の児童を被写体にした児童ポルノに関しては、嫌悪感を抱きますし、その撮影や売買に荷担した人間に対する罰則は、厳しいものにすべきだと考えています。
でも、この「非実在青少年」については、規制そのものが、憲法で規定されている表現の自由を侵害することはもちろん、「十八歳以下に見える」や「不健全」など、取り締まる側の解釈によっていくらでも恣意的な運用が出来ることを理由に、断固として反対します。
さらにいえば、これほど恣意的な条例の運用に関して、都民の強力を義務づけるなんていうのは、まさにファシズムの再来としか言えません。
「なにも大げさな」と仰る方もいらっしゃるでしょうが、このような役人の恣意的な運用の効く条例を通してしまったら、その次は、もっと進んだ規制が出てくることは容易に想像できます。
少し長いのですが、ナチスドイツが台頭したときの、ニーメラー牧師の言葉を引用しましょう。
「ナチスが共産主義者を襲ったとき、自分は少し不安であったが、自分は共産主義者ではなかったので、何も行動に出なかっ た。次にナチスは社会主義者を攻撃した。自分はさらに不安を感じたが、社会主義者ではなかったから何も行動に出なかった。それからナチスは学校、新聞、ユ ダヤ人などをどんどん攻撃し、そのたび自分の不安は増したが、なおも行動に出ることはなかった。それからナチスは教会を攻撃した。自分は牧師であった。そ こで自分は行動に出たが、そのときはすでに手遅れだった。」
私は、歴史に学ぶ者のひとりとして、この条例成立に反対します。
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コメント
まったく同感。
そもそも、都知事の御作「太陽の季節」はどうなるのでしょう。同じ物差しを当てれば、あれは「非実在青少年」が、いかがわしい行為をする小説です。それを所有している(はずですよね)都知事が、まず処罰されるということでしょうか。
言いたいことが言えない世の中と嘆く前に、言いたいことを言わないから、言いたいことが言えなくなるのだと、私は考えます。
投稿: 赤城毅 | 2010年3月10日 03時43分