厚生労働省が作った「風評被害」の話。
厚生労働省は1日、食品衛生法の暫定規制値を超える放射性セシウムが先月31日に検出された福島県天栄村産の牛肉について、同一個体の2検体を再検査をした結果、放射性物質は一切出なかったと発表した。元の検査過程に問題があった可能性が高く、汚染の疑いはないとみられる。
1日に同一個体のもも肉とサーロインを改めて検査したが、ヨウ素131、セシウムのいずれも検出されなかった。
31日の検査では、もも肉から規制値を10ベクレル上回る510ベクレルのセシウムが検出され、食肉で初めて規制値を超過した。厚労省は「検査過程を検証中」としている。
福島県天栄村で生産された牛肉から、国の暫定規制値を超える放射性物質が検出された、というニュースの続報がこれです。
要するに「誤報」だったわけです。
もともと、このニュースには疑問点がありました。
福島第一原子力発電所の事故で、大気中に放射性物質が放出されたのは3月15日のこと。
この牛肉が食肉処理されたのも、3月15日ということでした。
とすると、明らかに時系列的に無理があります。
牛が(牛に限りませんが)、体内に放射性物質を取り込むとすれば、大気に含まれた放射性物質を吸引するか、餌に含まれた放射性物質を摂取するか、飲み水に含まれた放射性物質を飲むか。それくらいしかありません。放射性物質を含んだ雨に打たれるということもありますが、体毛・表皮は食肉処理の段階で除かれますから、考慮に入れる必要なないと思います。
しかも、この第一報では「牛肉から」検出されたと報じています。
ということは、体内に蓄積されたということです。肺などの呼吸器であれば大気から、消化器官であれば餌や水からの汚染も考えられますが(それだって、3月15日のその日に、というのは無理があります)、筋肉である食肉部分に蓄積されるというのは、ちょっと考えられません。
私は、食肉処理はおろか、放射性物質など原子力関連の知識、情報についても素人です。
その素人ですら、「これはおかしくないか?」と思えることを、どうして厚生労働省のお役人は疑問に思わなかったのでしょう。
ニュースを伝えたマスコミ関係者の方のなかに、「あれ?」と思われた方は、いらっしゃらなかったのでしょうか。
このニュースはこうして否定されましたが、それでも福島県産の牛肉については「悪いイメージ」を持ってしまった方もいらっしゃるでしょう。
マスコミは、この「厚生労働省が作り出した風評被害」をしっかりと報道することで、福島県の畜産関係者の皆さんの名誉を回復すべきだと思います。
加えて、厚生労働省に限らず、ニュースソースが発表したリリースをそのままタレ流すのではなく、自分たちでもしっかり検証して欲しいと願います。
地震と津波までは天災でしたが、原子力災害は人災です。
そのうえ、さらに「誤報」でそれを拡大してはいけないと思うのです。
この苦しい時期、偏見と風評に追い打ちを掛けられつつも、それでも食の安全に誇りをもって生産されているすべての農業/漁業従事者の皆様に、心からの感謝と応援を送りたいと思います。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント